距 (きょ)

Spur

読み:スパー

分類

花の作り

花弁の後ろ側へまたの外側へ突き出た部分を距という。 中には蜜を出す蜜腺があり、袋の部分に蜜を溜め虫を呼ぶ働きをする。

距は細長い筒状で、蜜は花の入り口から遠くにあるため蜜を吸える昆虫は限られたものになる。 花は自身の受粉を助ける虫(送粉者)を呼びたいが、 花の入り口に蜜があると受粉に関わらない虫も吸い、蜜が無くなってしまう。 距を持つ植物の送粉者は主にチョウやハナバチなどの長い口吻を持つ昆虫で、 距はその昆虫のみが蜜を吸えるような仕組みとなっている。

スミレムラサキケマンラークスパーなどに見られる。

図1 スミレの距 花を後ろから見た様子(撮影日:2014年4月5日)

(図1-1) スミレの距

白い筒状の距が後ろに突き出ているのが見える。 スミレにはチョウやアブやハチなどのハナバチが訪れる。

スミレの仲間のページ

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図2-1 ラークスパーの距 正面と横から見た様子(撮影日:2022年5月19日)

(図2-1) ラークスパーの距

ラークスパーの距はとても細い。 ラークスパーの英名Larkspurはヒバリ(Lark)の蹴爪(Spur)の意味で 細く長く伸びる距を鳥の蹴爪に例えたもの。

ラークスパー(千鳥草)の仲間のページ

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図2-2 ラークスパーのつぼみの様子(撮影日:2022年5月19日)

(図2-2) ラークスパーのつぼみ

つぼみの頃は距がよく見える。和名のチドリソウは距を尾に見立てたもので、たくさんの鳥が飛ぶ千鳥草と呼ばれる。

ラークスパーのページ

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図3 イカリソウの距(撮影日:2013年3月28日)

(図3) イカリソウの距

イカリソウは紫色の萼片が4枚とその下に4枚の花弁がつく。 花弁4枚の距が四方に伸び、どの角度からも距を見ることができる。 この距を船の錨に見立て錨草と呼ばれる。

イカリソウのページ

図4 ムラサキケマンの距 小花の様子(撮影日:2021年4月11日)

(図4) ムラサキケマンの距

ムラサキケマンの小花は花柄の前と後ろでちょうど半分くらいの大きさとなっている。 花の入り口を足場にと、ハナバチが乗った重みで雄しべ雌しべが上に飛び出し ハチに触れる仕組みとなっている。

ムラサキケマンのページ

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図5 オダマキの距(撮影日:2008年5月8日)

(図5) オダマキの距

オダマキの花は下向きに咲き、距は上部の一点に集まる形となる。 こちらにもハナバチが訪れる。

オダマキのページ

図6 シンバラリア・ムラリスの距 ツタバウンラン(撮影日:2013年4月10日)

(図6) シンバラリア・ムラリスの距

シンバラリア・ムラリスの下唇の中央には蜜の在処を示す黄色い蜜標があり、 この上に乗ったハチの重みで花が開く仕組みとなっている。

シンバラリア・ムラリスのページ

図7 ビオラの距 横から見た様子(撮影日:2014年4月5日)

(図7) ビオラの距

距はスミレビオラの仲間でも形が異なる。 写真のビオラの距はとても細く、図8のビオラ・ソロリアは短い。 スミレと同じくチョウやハナバチが訪れる。

ビオラのページ

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図8 ビオラ・ソロリア・プリセアナの距 アメリカスミレサイシン(亜米利加菫細辛)(撮影日:2014年4月5日)

(図8) ビオラ・ソロリア・プリセアナの距

ビオラ・ソロリアの距は他のスミレと比べて短い。 花の奥が青いプリセアナの距は青く、 花の奥が緑色のスノープリンセスの距は緑色をしている。

ビオラ・ソロリアのページ

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